府本部は5月10日、大阪地方自治研究センターと共催で第24回大阪地方自治研究集会を開催し、各単組や関係団体、自治体議員など約150人が参加しました。住民サービスの提供が困難となることも懸念される「2040年問題」への対応が求められる中、今後の市町村のあり方について議論が進められている南河内地域(太子町、河南町、千早赤阪村)の状況を主な課題とし、大阪大正大学特任教授の片山善博さん(元鳥取県知事・元総務大臣)による記念講演「人口減少時代の地域と地方自治を考える」、および「地域が主役 キラリと光るまちづくり」をテーマとしたパネルディスカッションが行われました。
記念講演で片山さんは、人口減少局面における自治体の取り組みとして、この10年間進められてきた「地方創生1・0」を「ほとんど見るべき成果はなかった」と振り返り、「むしろ人口減少を前提に、これからの地域社会をどう構築するかを考える方が賢明。従来のやり方を見直すべきだ」と提言しました。
一方で、人口減に伴って生産年齢人口が減少しているにもかかわらず、県民総生産は落ちていないという実態に触れ、「やり方次第では、一人ひとりのウェルビーイング(幸福度)は維持、あるいは向上できる可能性がある」と述べました。また、ウェルビーイングを高めるためには労働時間を短縮しつつ、より高い価値を生み出す生産性の向上が重要だとし、「人口が減っても一人ひとりの生活水準や地域社会が維持できれば、深刻な問題とはならない」と語りました。
パネルディスカッションでは、片山さんに加え、桃山学院大学の吉弘憲介さん、阪南大学の和泉大樹さんがパネリストとして登壇しました。冒頭、コーディネーターより「南河内2町1村を取り巻く状況と大阪府内の動き」に関する課題提起があり、併せて府本部が実施した「居住組合員アンケート」の結果報告が行われました。
片山さんは、鳥取県知事時代の経験から、行政サービスを維持するために県が補完的に関与して解決を図る手法を紹介。吉弘さんは南河内2町1村の財政状況について、「現時点でただちに行き詰まる状況ではない」としつつ、「どう存続させるのか。行くも戻るもいい道はなかなかない。とはいえ合併しないという選択肢もバラ色ではない」と、冷静な議論の必要性を指摘しました。
和泉さんは、南河内地域におけるまちづくりの取り組みを紹介しながら、「合併に意味があるのかという根本的な問いが必要。公共サービスの持続性だけでなく、地域住民の主体性向上も同じ熱量で考える必要がある」と強調しました。
「LiveQ」を活用した参加者からの質問・意見も多数寄せられ、議論はさらに深められました。最後に、パネリストからそれぞれ「地域の問題を“自分ごと”とし、みんなで考えるという作業が必要」(片山さん)、「合併したからといって不便が解消されるわけではない」(吉弘さん)、「観光という観点から合併が必要ない魅力的な町に」(和泉さん)などとアドバイスがありました。
府本部では今後も、府内自治体における「自治体のあり方に関する動き」を注視するとともに、それぞれの自治体の特色や強みを大切にしながら、誰もが安心して暮らし続けられる地域づくりをめざし、議論をさらに深化させていきます。