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枚方市非常勤職員手当住民訴訟
-大阪高裁で逆転勝訴判決-
手当支給は適法/給与条例 支給要件満たすと認定

更新日:2010年9月24日

 2010年9月17日、大阪高等裁判所は、枚方市非常勤職員手当住民訴訟(「損害賠償請求及び不当利得金返還請求控訴事件」)において、控訴人(枚方市長)および補助参加した非常勤職員の主張を全面的に認め、逆転勝訴判決を下しました。

 この裁判は、住民である原告が、枚方市が給与条例に基づき一般職「非常勤職員」に対し、特別報酬として期末手当・退職手当を支給したことについて、給与条例主義に反し違法であるとして提起した住民訴訟です。2008年10月31日、一審の大阪地方裁判所は、原告の主張を認め、枚方市は、元市長個人に対し損害賠償を請求するともに、手当を受領した「非常勤職員」に対し不当利得返還の請求をすべきとの不当判決を下しました。自治労大阪は、諸手当の支給は当然であり、枚方市共闘労組の組合員である非常勤職員対する理不尽な返還請求の棄却を求めて、控訴審での闘いを進めました。

 主な争点は、第1に枚方市の「非常勤職員」が地方自治法204条の「常勤の職員」にあたるか,第2に枚方市の「非常勤職員」に手当てを支給できるとする給与条例は、支給額等を定めていないから給与条例主義に反するかでした。

 これに対し、二審の大阪高裁・三浦裁判官は、判決で、第1の争点について「本件非常勤職員の勤務実態は、常勤職員と大きく変わるものではなく、本件非常勤職員も、常勤職員と同様、生計の資本としての収入を得ることを主な目的としてそれぞれの職務にそれぞれ従事してきたものと推認されるから、本件非常勤職員は、地方自治法204条所定の『常勤職員』に該当するものと解するのが相当である」と判断しました。任用期間を1年としたことについては、定数条例を免れるために、形式的に「非常勤職員」として採用したにすぎないと判断し、常勤職員と同様に地自法204条所定の各種手当の支給を認めました。これは、常勤的非常勤職員の処遇改善に大きな前進と評価でき、今後の法改正の動きにむけた重要な判断といえます。

 次に第2の争点についても「本件給与条例において少なくとも給与の額及び支給方法についての基本的事項が定められており、かつ、その具体的な額等を決定するための細則的事項が本件非常勤職員給与規則に定められている本件においては、…給与条例主義に反するものではない…」とし、具体的基準及び具体的数値を規則に委任したことについて合理性があると判断し、枚方市が非常勤職員に対して手当を支給した行為は、給与条例主義に反するものではなく、適法であるとしました。

 大阪高裁判決は、以上の判断だけで逆転勝訴判決となるのに、さらに、「非常勤職員」に対して、支給された手当の不当利得返還請求義務についても否定しました。その理由は,任用手続が公序良俗に反するとか重大かつ明白な瑕疵が存するなどの特段の事情のない限り、支給された給与については、職員は命ぜられた職務に従事したことの対価及び生計の資本として受け取ることができ、これを不当利得として返還すべき義務は負わない、というものでした。このように控訴審は、市長側の、実質的には補助参加した非常勤職員の完全勝利の判決となりました。

 自治労大阪は、枚方市共闘労組と一体となって、補助参加人の立場で裁判闘争に取り組んできましたが、今回の判決を高く評価しています。今後は法改正への動きを加速させ、全国に60万人といわれる臨時・非常勤等職員の処遇改善の取り組みを大きく前進させなければなりません。