更新日:2014年3月4日
あまりにも唐突な橋下市長の市長辞職と「出直し選挙」。「大阪都構想」には反対の私たちですら、どう受け止めていいのか戸惑うばかりです。この市長選を名付けたら?この質問に橋下市長のものまねでも知られる社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」の福本ヒデさんが絶妙のネーミング、名付けて“行列のできない市長選”(朝日新聞2月4日夕刊)。まさに言い得て妙。このネーミングをタイトルにお借りして、“行列のできない市長選”の問題点を探ってみます。
絞り込みそのものに反対しているのではなく、まだ時期尚早と言っているんだよ。区議会議員数や区の名称、区役所の位置、府の名称などを話し合う第3ステージまでは、四つの区割り案で協議して、第4ステージで区割り案の絞り込みを行うというのが最初にきめたルール。それに第2ステージで検討しているいわゆる「パッケージ案」が大きな問題を含んでいて、協議が進まないんだ。
パッケージ案では、事務分担、職員体制、財産・債務の継承、財政調整、大阪版「都区協議会」、コストと効果の試算など、とても重要な事項を定めているんだけれど、問題山積なんだ。これについては「大阪の自治を考える研究会」で詳しい分析を行っていて、近日中にブックレットにして発行するので、ぜひ読んでみてほしい。
一例をあげると、松井知事が4000億に上ると言っていた再編効果額も、大阪市のままでも実現可能な市政改革によるものを除くと320億円程度しかない。しかもほとんどは将来的な人件費削減によるもので、実現性は疑わしい。一方、280億円といわれる再編コストはすぐに必要となり、財政を圧迫する制度設計になっているんだ。
一方、国は政令市の権限を拡充し、都市内分権を進める地方自治法改正を予定している。大阪市という大都市の改革のあり方はもっと幅広い視点で、慎重に検討するべきだというのが維新の会以外の会派の主張なんだよ。
だって大阪市は大きいとはいえ市民生活に密着した基礎自治体。やってみたけどうまくいかなかったでは済まされないんだから。
ちょっと難しいけど、日本の地方自治制度は市長や知事など行政の首長と地方議会の議員の「二元代表制」で成り立っているんだ。知事や市長には行政の長として大きな権限と権力が与えられているけど、その権力が暴走しないように議会は適切にチェック機能を果たさないといけない。首長や行政は、自らの政策をごり押しするのではなく、少数会派の意見にも耳を傾け、議会の同意を得ながら政策を進めるのが本筋といえるね。
今回、橋下市長は法定協議会の議論が思い通りに進まないことを、辞職・再選挙の理由だと公言しているよね。でも府市会議員も選挙で選ばれた市民の代表であり、自らの主張を正々堂々と表明する権利があるはず。橋下市長が再選されてもその権利は奪えないよ。
橋下市長が再選を口実に、議会をねじ伏せてわがままを通すつもりなら、それは地方自治への不当な挑戦だよ。議員を代表に選んだ「民意」を踏みにじることでもある。こうした「選挙至上主義」とも言える「劇場型」の政治手法は、行政と議会に深刻な亀裂を生むし、じっくり議論して合意を作り上げていくまじめな政治を破壊してしまうことになる。それにこれは6億円もの市税の無駄遣いであり、2014年度予算編成の大事な時期に市政の停滞ももたらす。
でも候補を擁立したら、結局どちらが正しいか選挙で決着をつけるということになって、選挙に勝てば何でも許されるという橋下市長の政治手法のあり方自体を問題にできなくなるんだ。候補を擁立しないことが橋下流の「劇場型政治」への最大の抗議の表明なんだよ。