6月9日、自治労大阪府本部は、大阪府議会、大阪市会での「大都市制度(特別区設置)協議会」の設置を大阪維新の会及び公明党の賛成により議決したことに対し強く抗議する見解を出しました。今後は、大阪市の廃止、特別区への分割に反対するすべての団体、個人、政党会派と連携して、再度の住民投票実施反対、大阪市の存続を前提とした大阪の発展をめざす取り組みを強めると示しました。
2017年6月9日
自治労大阪府本部
大阪市会は5月26日、大阪府議会は6月9日、それぞれの議会本会議において「大都市制度(特別区設置)協議会(以下、協議会と略)」の設置を大阪維新の会及び公明党の賛成により議決しました。これにより2015年5月17日の住民投票において否決されたばかりの大阪市廃止、特別区への分割案が再び検討されることになります。
自治労大阪府本部は、従来から主張している通り、大阪市の廃止、特別区への分割をめざすいわゆる「都構想」には、そもそも反対です。「都構想」が政令市のメリットである豊かな財源と府県並の権限を活かした力強い都市政策の推進を不可能にし、24行政区毎に区役所を持つことで可能となるきめ細やかな住民サービスの提供を衰退させるものだからです。
その基本的立場に加え、「都構想」はわずか2年前の2015年5月17日、「住民投票」での「否決」という形で既に決着のついた問題です。主権者たる市民の重い判断に従うのが政治の責任です。その責任を放棄し、「都構想」再チャレンジを目論むことは、大阪の改革の時計の針を2年前に戻すものです。そんな時間は大阪にはもう残されていません。以上の立場から、改めて今回の協議会の設置に強く抗議するものです。
その上で、2月議会に提出された議案が一部修正されたことを踏まえ、この修正内容について自治労大阪府本部としての見解を以下に示します。
以上に関連して、この間の総合区制度導入をめぐる動向について、付言しておきます。
吉村大阪市長は総合区制度の導入には「合区」が不可欠として、既に区長会に8区への合区案を提示し、この夏を目途に具体的な制度案を示すとしています。しかし、総合区の導入と「合区」はレベルの違う課題です。「合区」は大阪市民にとって極めて重大かつデリケートな問題です。他の政令市に比べて大阪市の行政区は多いといわれますが、現在ある行政区が形成されてきた歴史的経緯や行政区と分かちがたく結合しているコミュニティー組織の特性などについて十分に考慮せず、効率化の観点のみから「合区」を実施することは、本来の目的である都市内分権の推進、住民自治の拡充をむしろ阻害しかねないと考えます。他の政令市においても「合区」はほとんど事例を見ません。「合区」議論は市民の声を聴きながら、慎重に進めることが大切であると考えます。
協議会の設置が決定されたことにより、再度の大阪市廃止、(特別区設置)議論は不可避のものとなりました。しかし、制約が課せられているとはいえ総合区についても協議の対象となるということは、結果として協議会での議論は「大阪市の存続」を前提とする「総合区」の導入か、「大阪市を廃止」する「特別区」への分割かの比較検討を中心に進まざるを得ません。より本質的には大阪市民に一番身近な基礎自治体の姿として、豊かな財源と府県並みの権限を有する「政令市」を選択するのか、大阪府の内部組織に過ぎず法的にも「基礎『的』自治体」としか定義されていない「特別区」を選択するのかが問われざるを得ないと考えます。
法的には「協定書案」を住民投票に付すためには、協議会及び府市の議会においての議決が必須となっています。このことは協議会や議会において「(特別区設置)」に反対する意見が存在することを当然、想定していることを意味します。協議会での「(特別区設置)」の是非を問う議論は原理的に可能です。これを不服として前回のように突然の「出直し選挙」に打って出たり、「民意」を盾に反対意見の委員を排除するといった暴挙こそ、絶対に許されないと考えます。
以上の立場から、自治労大阪府本部は前回の経過を踏まえ、協議会の議論動向に警戒心を持って注視するとともに、大阪市の廃止、特別区への分割に反対するすべての団体、個人、政党会派の皆さんと連携して、再度の住民投票実施反対、大阪市の存続を前提とした大阪の発展と住民自治の拡充をめざす取り組みを強めます。