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2010年1月6日
府本部は単組から専門職組合員の参加を得て、2009年11月17日から23日にビルマ(ミャンマー)難民支援ツアーに取り組みました。
今回は5年計画の4年目。支援しているメラマルアンキャンプ・くま図書館の改築開館式と司書・保育士・看護師による現地スタッフへの研修会がメイン。
一時的建築物しか許可されない状況下で、竹を中心に傾斜地に作らざるを得なかった旧くま図書館。基礎に歪みが出ていたことで立替に踏み切り、本年4月に完成し、今回のツアーで正式な開館式を行いました。
より広く、安定した新図書館の完成にキャンプ図書委員会から「閉じられたキャンプのなかで、図書館が子どもらだけでなく、高齢者や若者、女性にも将来への夢・活力を生み出す欠かせない場になった。新くま図書館を本当に喜んでいる。充実して使って行きたい」と感謝が述べられました。
研修会には、メラマルアンと隣りのメラウーキャンプ、合わせて8ヶ所の図書館から指導員や女性、青年のメンバー35人が参加しました。
図書館をもっと楽しい場所にするために、すぐにでも使えるものを見つけたい――そんな意欲の感じられる参加者に、講師役も緊張気味。微妙な呼吸で研修がスタートしました。
1日目は図書館司書が、幼児期の子どもへの絵本の読み聞かせを「かえるがぴょーん」や「大きなかぶ」を使って披露。また「六角返し」などの作り方を教えました。
続いて、絵本の展示やイベント宣伝の仕方、事業記録と保管の意義を説明し、子どもらに読まれて傷んでしまった図書の修理の基本も実演しました。参加者は糸と針・のりをつかってワークショップも体験。本を大切に使っていく意識改革と基本技術を学びました。
2日目は保育士から「手を叩きましょ」「貨物列車」「ペットけん玉」「ブンブンごま」など、歌と体を使った遊びのノウハウを伝えました。歌を伝えるのは難しかったですが、ジェスチャー一杯に作り方はこう、遊び方はこうと一体感を作り出し「渦巻きジャンケン」では広場に出て、カレン語のパオ・ニン・チュ(じゃんけんぽん)のかけ声で走り回り、盛り上がりました。
キャンプは森のなか、谷川の流れる傾斜地にあり大人だけでなく、子どもにも厳しい環境でした。ケガや原因不明の発熱、病気にかかる可能性も高いので、研修会最後は看護師が、擦り傷・切り傷、やけどや鼻血への対応方法、普段の手洗い・うがいのポイントを分りやすく説明。とくに急な発熱では「手足が熱いか冷たいか、震えはあるかなど、経過状況を見て、原因のウイルスや病原体に抗している体の自然治癒力を引き出すことが重要」と、体のなかで何が起こっているかを説明しながら対処法を伝えました。参加者からは「重症でも病院へ行けない状況では、何が大事か」など、切実な質問も出されました。
訪問団は研修会前段にキャンプ委員会を表敬、メラマルアンの現状説明を受けました。
委員会事務局長は「くま図書館と質の高い本の提供で、キャンプ内に読書熱の高まりが生まれている。これまでの支援に感謝したい」と述べ、加えて「2002年当時は約1万人だった。2006年からの第3国定住で11カ国へ3200人が出発した。それでも今、国連が認めた登録者は12776人。4600人が新規流入で待機者だ。死亡者もいるが、出生や他キャンプからの結婚転入などを含め約1万8千人にふくらんでいる」と現状の説明がありました。
派遣団団長から、「専門職の仲間と3回目の研修会に来た。研修を通してお役に立ちたい」と訪問の思いを述べ、合わせて「第3国定住でキャンプの変化はどのようなものか」と質問。事務局長から「知識層が最初に出発して行き、教員確保など困難が出ている」と、新たな課題が話されました。
ビルマとの国境、北部メーホンソン県から南部ヤンチャナブリ県まで、数百キロに渡る地点に9ヶ所、国境から数キロ程度の山中にキャンプは設置され、15万人以上の難民が存在しています。国連UNHCR(高等難民弁務官事務所)がタイ内務省、陸軍、森林庁、地元自治体などと協力し、1994年から難民保護を行っています。
食料・水・衛生・保健・医療・教育など最低限の物資は支給され、学校運営などキャンプ自治も許されていますが、自由に出入りはできず、ビルマへの帰還の目途もなく、新たな難民の流入も止まらないなかでの生活です。
新しくなったくま図書館も見てきました。立派なものができて、有効に利用してもらっていました。自治労らしい支援が難民の人々の厳しい現実のなかで、少なからず役立っている現場を確認できました。組合員のカンパと単組の支えでこの事業が成り立っています。今後も顔と顔の見える支援・協力関係に努力して行きたいと思います。