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更新日:2008年12月10日
2008年11月21日(金)、自治労大阪は「2009年度消防セミナー」を大阪市内で開催しました。廣石副委員長(自治労大阪)は「『消防の広域化』については、きびしい財政状況のなか、各自治体の負担がどう変化していくか によっては難しい課題や、地元との調整なども解決しなければならない今後の課題も多く含まれている。自治労大阪として組織拡大の取り組みとあわせた取り組みの検討をしていきたい」と話しました。
消防セミナーは、大阪府内の消防職員を対象に毎年、開いています。「職場の安全衛生」についての講演では、豊中市職員課の道端昭次さんを講師にお招きし、職場の安全衛生活動をどのように進めていくのか などについて学習しました。
「消防職場の問題点と改善策」をテーマにしたワークショップでは、消防職場が抱えている問題と解決方法について議論を深め、活発な意見交換を行いました。全国消防職員協議会(全消協)(注) 近畿ブロック選出幹事の新名さんは「今日のように(義務をはたしていくために)自由に発言できる雰囲気が職場にも必要」とし、最後に「消防士がまじめなことが再認識できた。しかし消防士にも家庭がある、もう少しわがままな意見があってもよかったのではないか」とワークショップをまとめられました。
今回の消防セミナーは、大阪府内の消防職員を対象に、労働安全衛生の課題について議論を深めることが目的です。災害は、複雑化・多様化し、また大規模化する傾向にあります。こうした状況のなか、消防職場を取り巻く環境は いっそう厳しさを増し、付帯設備も老朽化が進んでいます。また2007年に新聞報道された沖縄県の豊見城(とみぐすく)市消防のような事例もあります。豊見城市消防は、近年まで救助用ボートを運ぶ台車の牽引免許を持つ職員がいないなか、大型トレーラーの運用を強いられていました。消防庁は、これを「緊急事態における超法規的な措置」だとして対策をおこたり、問題を放置していました。このような状況を背景にして豊見城市消防職員協議会が立ち上がり、またそれをきっかけにして沖縄では、久米島町消防職員協議会、島尻消防職員協議会、中城北中城消防職員協議会、金武地区消防職員協議会などの協議会が立ち上がっています。
新名さんは「情報が少なく閉ざされた環境で仕事をしていると、消防の職場が抱えるさまざまな問題を『どこでもそうなんだ』と思って受け入れてしまう」と指摘しました。
また広域消防運営計画の策定にあたっては「消防職員に情報を開示し、職員の意見反映をはかること」という付帯決議が採られていることを紹介しました。また国は、住民や関係者に広域消防運営計画について周知徹底するように都道府県に対して指導していることを明かにされました。その上で参加者に「これらをふまえて、はたして風通しのよい消防職場が大阪にあるだろうか」と問いかけました。
参加者を見渡した新名さんは「このような問題を解決するには、消防職員に対する団結権の付与は避けて通れないものだと感じている」と話されました。
新名さんは、国際公務労連(PSI※)のピーター書記長が全消協との対談で述べられたことについても紹介しました。それは「民主主義社会において団結権は基本的人権である」ということ、そして「日本の消防職場において団結権があるのは当然のことである」ということです。
同時に、ピーター書記長が、ILO(※)の総会において「日本の消防・救急職員に対しては団結権が付与されていない。消防職員は団結権を必要としている」と言及されていることも紹介しました。
2009年度消防セミナーの主なプログラムは「職場の安全衛生」についての講演と「消防職場の問題点と改善策」をテーマにしたワークショップでした。講演では、豊中市職員課の道端昭次さんを講師にお招きし、職場の安全衛生活動とは どのように進めていくのか などについて学習しました。
道端さんは、豊中市において消防職員の被災事例の約8割が訓練中または演習中、たとえば事故車両から救出する作業の訓練中や倒壊家屋を想定した救助活動の演習中などで起きているということを明らかにしました。そして労働安全衛生法が、労働者を安全と衛生の部分で守ろうという考え方から施行された法律であるということ、その目的が労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することだと訴えました。
講師は「安全」が「身に危険を」「物に損傷、被害、損害」を受ける恐れがない状態を指し、「健康」とは世界保健機関(WHO ※)の定義では「何ごとに対しても前向きの姿勢で取り組めるような精神および肉体、さらに社会的にも適応している状態」を指している、と述べました。
そして労働安全衛生法が、労働者と使用者の双方のことを抱えている法律で、安全衛生対策活動の考え方は、安全とは災害をなくすことではなくリスクを低減する活動であり、安全はハザードと人との接触を防止することであると話しました。
ワークショップでは、参加者が6つの班に分かれて消防職場が抱えている問題と、その解決方法について議論と意見交換を行いました。討議内容の発表では「財政不足」や「懲罰人事」「人員不足」などのさまざまな問題が上げられました。そして「災害対策マニュアルの策定」や「財政難だが計画的な人員採用が必要なのではないか」「長期的、計画的な人事異動によって改善策が見つかるのではないか」などの意見が活発に交換されました。
ワークショップのまとめで、新名さんは「今日のように自由に発言できる雰囲気が、職場にも必要です」と話しました。そして「義務をはたしていくためには、どうして行けばいいのか、という意見が多く出ました。しかし、消防士といえども労働者であることを、もう一度考えてもらいたい」と訴えました。最後に新名さんは「消防士がまじめなことを再認識できました。しかし、消防士にも家庭があります。家族は運動会や授業参観に来てほしいと思っているかもしれない。もう少しわがままな意見があってもよかったのではないでしょうか」と話されました。
全国の消防職員が働きやすい職場をつくるために結成され、全国の消防職員との情報の共有化をはかる協議会。全消協活動に違法性はない。違法性を懸念されているのは地公法52条5項「団結権の禁止」だが、当局と交渉するのではなく「協議」する団体を組織することは禁止されていない。全国の消防職員が全消協に集まり、それぞれの運動を展開している。
詳しくは全消協のホームページ(http://www.jichiro.gr.jp/zensyokyo/index.html)をご参照ください。
国際的な産業別労働組合連合組織で、現在154カ国、651の労働組合に加入している公共部門労働者2,000万人の組織。日本では自治労などが加盟。
ILOにおいては、公共部門を代表する公式認定のNGO組織。UNESCO、ECOSOC、UNCTADでも公式認定されており、国際労働組合総連合(ITUC)と提携して活動。
労働条件の世界的な向上をもたらす解決策の発見を可能とする国際的な制度的枠組み。
1日8時間労働、母性保護、児童労働に関する法律や職場の安全や平和な労使関係の推進などの問題へ取り組む。その最も重要な役割は、国際労働基準を設定する条約と勧告を国際労働総会で採択すること。条約は加盟国の批准によって実施を義務づける拘束力を生じる。また勧告は、政策、立法、慣行の指針となる。現在、日本を含む182カ国が加盟。