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2009年2月13日
自治労大阪は、2008年11月10日から16日、タイのビルマ(ミャンマー)難民キャンプの国際協力事業の中間的な事業評価をし、今後の国際協力事業に活かすために、ビル マ(ミャンマー)難民キャンプを訪ねました。参加者は、池田国際協力運営委員長をはじめとする6人です。
自治労大阪はSVA(シャンティボランティア会)と連携して、難民キャンプの図書館事業にかかわる活動の支援に取り組んでいます。
タイとビルマ(ミャンマー)の国境には9ヵ所の難民キャンプがあり、約14万人が暮らしています。難民キャンプの設営から24年が経過しようとしている現在も、ミャンマー軍事政府と少数民族の和平交渉が行われていますが、ビルマ(ミャンマー)難民が母国へ帰る目途はたっていません。タイへの難民の流入は、いまも続いています。
2005年から「第三国定住」が認められ、約35,000人(2008年4月末現在)がアメリカ、カナダ、ノルウェーなどにむけて出発しています。日本も、2010年には30人程度を受け入れると表明しました。でもビルマ(ミャンマー)難民の多くは自分の生まれ故郷へ帰ることを強く望んでいます。
いま、難民キャンプでは、教員が突然退職を願い出るケースが増えています。なぜなら第三国定住に応募するからです。教員の指導力が低下することは、子どもたちの不登校や中退の原因にもなります。そのため、学校経営を担当しているNGOは頭を悩ませています。
自治労大阪が支援する図書館事業でも「第三国定住」の影響で図書館司書の育成が緊急な課題になっています。現地では、これまでも自治労大阪が協力してきた「専門家派遣セミナー」などの研修の実施が望まれています。
メラマルアン難民キャンプの入り口には、タイ陸軍部隊による検問所が設けられています。物々しい様子の検問所を見て、ビルマ(ミャンマー)の難民たちがタイ政府の管理のもと「キャンプという限られた場所で生活している」ことをあらためて感じました。
メラマルアン難民キャンプでも直面する課題は、第三国定住でした。キャンプには、現在、約2,900世帯17,200人のビルマ(ミャンマー)難民の人たちが暮らしています。
自治労大阪がSVAの協力で難民キャンプに建設した「くま図書館」で図書館の利用者にインタビューしました。いくつかのグループに分かれて、(1)利用回数、(2)どんな本を読むのか、(3)利用方法、(4)改善点などについて質問していきました。
とくに「雨の日に子供が、外ではなく図書館で遊ぶようになって健康上も良い」という意見があったのが印象に残っています。
子どもばかりではなく、大人たちも「もっと本が読みたい」と望んでいます。カレン語やビルマ語の「辞書」などの充実は、彼らにとっては切実な問題です。
青少年たちは、みんなまじめで積極的だと感じました。読んでいる本も「ニュース」「スポーツ」「政治」「健康」など幅広いジャンルに興味を持っています。しかし、くま図書館の蔵書は、彼らのニーズに答えるにはあまりにも少ないようです。難民キャンプに暮らす青少年たちは「いろいろな本が読みたい」のだと言います。とくに新聞などの「タイムリーな情報」がほしいと強く望んでいます。
また、くま図書館は、学校教育の補助的機関としても利用されていました。資料・蔵書の充実が必要で、求められてもいます。
子どもたちは、どの子も好きな本があるそうです。図書館が楽しくて仕方がない。好きな本がある場所も覚えています。
キャンプの子どもは、絵や写真ではじめて「動物」「のり物」「花」について知ります。キャンプから出ることができないから、絵や写真がいろいろと載っている本を欲しがっています。また字が読めない小さな子どもには、年長者が「読み聞かせ」していました。
図書館の維持管理と図書館の「楽しさ」などを伝える役割も担っているのは図書館委員会。もちろん、子どもたちだけでなく、大人が楽しめることも考えなければなりません。
最近、くま図書館のすぐ横に大きな落石がありました。いまのままでは、いつ地すべりや落石があるかわからないので、くま図書館の利用をためらう人もいます。くま図書館を安心して利用してもらうためにも「乾期」が来たら図書館設備の改善にむけて取り組んで行かなければなりません。
図書館の運営は、図書館員が行っています。
子どもたちは絵本も好きですが「あそび」も大好きです。図書館員は、もっと日本の「あそび」を教えてほしいと言います。でも、自治労大阪としては、どんなことでも望み通りに支援することがいいことだとは考えていません。だから「自分たちで『あそび』を考えたり、伝統的な『あそび』を伝えたりすることも大切ですよね」と提案しました。しかし、子どもは常に新しいものを求めます。図書館員の人たちには「それに答えられる図書館員でありたい」という強い意欲があるようでした。
自治労大阪が支援している絵本を贈る活動は、ビルマ(ミャンマー)難民キャンプの大人たちにも、子どもたちにも喜ばれていることがわかりました。また図書館が、子どもたちの遊び場にもなっている、そして知識を得るために重要な場所にもなっていることを知って、今後も継続した活動が必要なんだと感じました。
タイにおけるビルマ(ミャンマー)難民支援事業にある、さまざまな課題を解決していくためにも、これまで協力してきた「専門家派遣セミナー」などの取り組みの改善・充実が求められています。また設備上の課題や第三国定住にかかわる、あらたな課題も浮き彫りにされてきました。
自治労大阪は、今回の中間事業評価をもとに国際協力事業の是非や今後の計画などについて検討を進めていきたいと考えています。