HOME > 府本部の取り組み > タイにおけるミャンマー難民支援〜第2回専門家派遣セミナーを開催
2007年11月24日
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自治労大阪は、シャンティ国際ボランティア会(SVA)と協力して、難民キャンプに「くま図書館」を建設しました。そして今回は、現地のSVAスタッフと難民キャンプの図書館スタッフを対象に、以下の日程で専門化派遣セミナーを開催しました。
月日 | 日程 | |
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11月17日(土) | 11:10 | 関西空港発(TG623) |
15:30 | バンコク到着 | |
20:00 | チャンマイ到着 | |
11月18日(日) | 08:00 | メーサリアンへ移動 |
13:30 | SVAメーサリアン事務所訪問-事業説明、意見交換ー | |
11月19日(月) | 07:30 | メラマルアン難民キャンプへ移動 |
10:00 | キャンプ事務所にて委員会より説明・質疑応答 | |
13:30 | キャンプ内 学校・職業訓練所等 訪問 | |
15:00 | くま図書館訪問 | |
11月20日(火) | 08:30 | メーサリアン出発、メーソットへ |
14:00 | メラキャンプ(セミナー開会式) | |
11月21日(水) | 09:00 | 専門家派遣セミナー第1日目 |
11月22日(木) | 09:00 | 専門家派遣セミナー第2日目 |
11月23日(金) | 14:00 | バンコクへ移動 スアンプルースラム視察 |
23:00 | バンコク発 | |
11月24日(土) | 06:10 | 関西空港着 |
このセミナーの目的は、図書館に関連する分野での人材育成です。
自治労大阪からは、獣医師1人、看護師2人、保育士2人、図書館司書1人を含む計10人がセミナーの講師として、そしてメラマルアン難民キャンプの視察を目的として現地へと向いました。
タイとミャンマーの国境、タイ王国側の国境付近には9ヵ所の難民キャンプがあります。
そこには15万人のミャンマー難民が、不自由な生活を余儀なくされています。彼らは、ミャンマー軍事政権とカレン民族勢力との武力紛争から逃れてきた人たち、そしてミャンマー軍の人権弾圧から逃れてきた人たちです。
こうした難民キャンプができて二十数年が過ぎましたが、まだキャンプで暮らす人たちが、ミャンマーへ帰国できるような状況ではありません。
それどころか、国境を越えてタイ王国へ逃れてくる人はさらに増加しています。なぜなら、ヤンゴン・デモの参加者や僧侶が危険を感じているからで、ひと月に約100人がメーソットなどへ保護を求めて出頭しています。
ほかにも1日に5人くらい、ひと月に150人くらいの人が国境を越えていますが、この人たちは配給を受けることもできず、キャンプ内でもひもじい生活をしています。
05年にはミャンマー難民の第三国定住が認められました。
07年11月末、日本でも「第三国定住」制度について、関係省庁が導入の可能性を検討しはじめたことが報じられています。そして08年2月18日、日本政府は、ミャンマー難民の中から日本での定住を希望する人を一定数、受け入れる方針を示しました。
ミャンマー難民が第三国へ定住することができる。そのことは素晴らしいことです。しかし、難民キャンプで暮らす人の多くは、一日も早く母国へ帰りたいと強く願っています。
難民キャンプは、タイの行政組織とタイ陸軍の監督下にあります。そのため、難民キャンプの入り口にはタイ陸軍部隊による検問所が設けられています。
外部の人がキャンプ内へ入ってくることもありますが、ミャンマー難民の人たちは、基本的に自分が暮らすキャンプの外へ出ることができません。
また、キャンプ内では職業訓練も行なわれていますが、彼らに賃金労働は認められていません。
どんなに意欲があっても、どんなに技術を磨いても就労することさえかなわない。
難民キャンプで暮らす人たちは、自分の将来に夢を持つことさえ難しいくらい不自由な生活をしています。
難民キャンプの運営は、難民によって選出されたキャンプ委員会が自主的に行っています。キャンプ委員会には食糧配給や保険、教育などの小委員会が設置されています。
NGOは、衣食住から保険・医療、学校教育などの援助活動をしています。現在、タイ内務省に公認されたNGOは全部で17団体あります。日本のNGOは、SVAのみです。
いま、難民キャンプが直面している課題は、第三国定住による人材の流出です。
第三国定住を希望する多くの人は、学校の先生や看護師や医師など、知識層と呼ばれる人たちです。そういった人材が第三国定住で移住していくためキャンプ内で、教育活動、看護・医療活動などに支障がでています。
どの難民キャンプでもこの課題にどう対応していくか頭を悩ませています。
くま図書館では、数十人の子どもたちがカレン民族の群舞で、私たちを歓迎してくれました。
難民キャンプの建築物は、主にタケとユーカリを使用していて、高床式で建築されています。くま図書館も同様の建物です。
私たちを出迎えてくれた子どもたちに、「みなさんに(くま図書館は)よく利用してもらっていますか?」と質問したところ、とても元気のいい返事が返ってきました。
くま図書館では、子どもたちの歌や読み聞かせなどを見学しました。自治労大阪の派遣団からは、保育士である三谷さん、今井さんを中心に、手遊び「大きな栗の木の下で」を紹介したあと、子どもたちと一緒に記念撮影しました。
セミナーに先立ってメラキャンプで「第5回図書館員合同研修会」のオープニングセレモニーが行われました。この合同研修会には、メラ、ウンピアム、ヌポ、メラマルアン、メラウ、タムヒン、バンドンヤンの各キャンプから図書館員42人が参加しています。
自治労大阪は、この合同研修会の全日程の内、2日間を使って専門家派遣セミナーを開催しました。
オープニングセレモニーでは、まずメラキャンプのキャンプコマンダーからあいさつを受けました。そして、40人の子どもたちが群舞を披露してくれました。
次にSVAの小野豪大さんからあいさつがあり、そのあいさつの中で小野さんは、タイの総務省や各地のキャンプコマンダー、自治労大阪へ謝意を述べられました。
自治労大阪からは、蜂谷執行委員長が団員を紹介し、「私たちの仕事は、地域で生きていくためのさまざまなサービスを提供することで、図書館員のみなさんと同じ子育ての支援や医療などです。限られた時間ですが、みなさんのお役に立てるようにがんばります」とあいさつをしました。
07年11月21日、専門家派遣セミナー初日。
最初に、齋藤 浩一さん(獣医師)が、感染症と感染症予防について講演をしました。
齋藤さんの講演は、パワーポイントを利用してより理解を深めることができるような工夫がされていました。その講演の中で齋藤さんは、① 細菌とウィルス、② 感染ルート、③ 感染防止について詳しく説明しました。そして各地のサンプルをもとに、各キャンプで日常的に飲まれている水にどんな細菌がいるのか、実際に見せて説明することで、各キャンプのセミナー参加者に、感染症とその予防について理解を促しました。
続いて、看護師の渋谷 豊克さんと前田 好夫さんが、感染症予防の方法のひとつとして「手洗い」と「うがい」を紹介しました。その後、参加者全員で一緒になって「手洗い」と「うがい」を練習しました。
お昼休憩を挟んで午後からは、看護師の渋谷さんと前田さんのお二人に自治労大阪の小田健康福祉部長を加えて「手洗い」と「うがい」を復習しました。そして、① 骨折したときの対処、② 出血したときの対処、③ 広範囲に出血したときの対処、④ 足をねんざしたときの対処、⑤ 指を骨折したときの対処など、ケガの正しい処置の仕方を実演し、実際に参加者に体験してもらいました。
最後に、参加者から「歯磨きが重要なことは本で読んで知っていますが、正しい歯磨きのやり方を知らないので教えてほしい」との要望があり、急きょ専門家派遣セミナーの番外編として、保育士の三谷 奈緒美さんが正しい「歯磨き」について講演を行いました。
この番外編は、三谷さんがダンボールを使って歯ブラシの模型を作成し、小田健康福祉部長がホワイトボードに歯の絵を描くなど、専門家派遣セミナー講師陣が一体となっていて作り上げ、参加者からも活発に質問が出される有意義な特別講演となりました。
07年11月22日、専門家派遣セミナー2日目。
午前には、保育士の今井小百合さんと三谷奈緒美さんが講師となり、身近にあるものでのおもちゃ作りと日本のリズム遊びについて講演をしました。
はじめに「手をたたきましょう」を紹介したあと、現地スタッフからの要望で「手をたたきましょう」のカレン語の歌詞を一緒に考え、三谷さんが歌と踊り、今井さんがキーボードを演奏して参加者全員でリズムに乗って体を動かしました。
ほかにも「手遊び:さかながはねて」、「ゲーム:じゃんけんれっしゃ」など、子どもたちとのレクリエーションについて実際に体験してもらい、また「らくがき絵本」や「ぶんぶんごま」、「ペットボトルけんだま」など身近にあるものでのおもちゃ作りや「子どもの認識力を育てるお絵かき」について説明をしました。
午後には、自治労大阪の亀元副執行委員長が図書館司書としての立場で、ブックスタートや図書館はどうあるべきかなどについて事例をあげて講演を行いました。
そして最後に「図書館はみんなが楽しく安全に過ごすことができないといけません。図書館員のみなさんは、図書館員であるという自覚を持って仕事に取り組んでもらうことが大事です」とまとめ、専門家派遣セミナーを終了しました。
専門家派遣セミナー、そのツアーの最終日には、バンコクのスワンプルースラムを視察しました。スワンプルースラムは、04年の大火災でほぼ全域が焼失し、約7,000人の居住者が家を失いました。大火災では、SVAの図書館や保育園も全焼しましたが、その後3年半かけて復興し、コミュニティセンターが再建されました。住宅も一部を除き再建が進んできています。
コミュニティセンターでは、図書館と保育所のほか、子どもたちにタイ舞踊を教えるなど、文化活動も行っていました。