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更新日:2011年9月29日

大阪発第6回保育・子育てを考える集い
"地域の絆"保育関係者330人で活発な議論

パネルディスカッション

 2011年9月4日(日)、自治労大阪は、子ども情報研究センターとの共催で、「大阪発第6回保育・子育てを考える集い」を大阪市内で開きました。

 市民団体を含めて、府内で保育にかかわる関係者330人が集会に参加してくださいました。この集会は、地域の活動を通じて、昔ながらの、ご近所が手を取り合う子育てを振り返ってみること。そして、地域で活動するに当たって、行政の制度とどんな形で連携していけるかを、具体例から考えていくために開催されました。

 サブテーマの「『子育て・子育ち』力を問いなおす~地域から」と題した全体会では、府内各地から駆けつけてくれたNPOや、地域のボランティアで活動する4人をパネリストにパネルディスカッションを催しました。コーディネーターは、子ども情報研究センター所長の田中文子さん。パネリストからは、それぞれの地域で実践している活動や、"地域のきずな"と"地域のネットワーク"の大切さが、話されました。

熱心に聞き入参加者

パネリスト、コーディネーターの発言(抜粋)

地域で子どもたちのことを考えるネットワークづくりが重要

大森 順子さん
(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西、大阪府子ども家庭サポーター)

 子育てが大変な時代だと感じています。親たちは、虐待をしてしまったらどうしよう、虐待と思われたらどうしようと、すごく不安がっている。社会の目が子育て家庭に冷たいように感じます。

 子ども家庭サポーター協議会では、お昼を食べてない子がいることを、いろんな地域で聞いて、子どもたちのために、炊き出しをやろうと考えました。

 とくにイベントをしなくても、広くて安全な場所さえあれば、子どもたちはいくらでも遊んでいます。その場所で、ご飯も無料で食べられるようにしたのです。

 この活動を、同じ地域で1年間、続けてきました。子どもたちが、地域のおとなへの信頼をちょっとでも感じてくれたらうれしいと思っています。実際に、おとなもすごく楽しい時間を共有できました。

 子育ては親だけがするものではありません。子どもは、いろんなおとなや子どもとのかかわりのなかで、育っていきます。そして実は、地域で子どものことを考えているおとな多いんです。そこをなんとかつないでいきたいと思っていますが、「個人情報保護」がネックになって、なかなかつながれない。さらに、子どもは学校や親から「知らない人と口をきいてはいけない」と言われています。でも、最初は誰でも知らない人同士。声をかけ続けることで、知り合いになって行きます。

 地域で子どものことを考えている人たちが集まって、ネットワークづくりをしていく必要があるのだと考えています。

地域であいさつを交わす大切さを実感

竹内 玲代さん
(大阪市城東区子育てサロン)

 私は、主任児童委員として、子育て中の親子が孤立することがないように仲間づくり、情報交換の場としての子育てサロンを運営していますが、サロンに来ることができずに、孤立している家庭があることが気になっています。

 私自身、引っ越ししてきて、マンションという隔離された場所で寂しさを感じていた時期があります。子どもは、学校などに入ると関係をつくりやすくなりますが、それまでは自分から仲間づくりをしていかないと、つながれません。

 それに、サロンで気になっていた親子も、サロンから卒業してしまうと様子がわかりにくくなってしまいます。そこで、大阪市城東区子育てサロンでは、定期的に関係機関の会議を開いて、ケース検討を続けています。行政、関係機関などと連携をとりながら地域を守っていきたいと思っています。

 先日のこと、しばらく子育てサロンに来なかった人が久しぶりにやって来て、「子どもが寝ない、ご飯も食べない、もうクタクタ…」と悩みを打ち明けていきましたが、最後には「子どもはかわいい」と言ってくれた。大変な気持ちを受け止めて黙って聞いてあげることの大切さを、あらためて感じた出来事でした。

 いまでは、私が地域を自転車で走っていると、何人もの人から声をかけられ、立ち話をします。これは、子育てのとき、いろんな人と出会ってつながりができてきたからこそ。ちょっと話をする、あいさつをするということが大切だと感じています。

駄菓子屋は子どもたちの社交場

武田緑さん
(暮らしづくりネットワーク北芝、「樂駄屋」)

 子どもたちの居場所として、駄菓子屋「樂駄屋(らくだや)」を運営しています。

 暮らしづくりネットワーク北芝は、子どもだけでなく、高齢者や地域のすべての人を対象に、事業を作っています。

 私は、そのなかで、教育の部門の担当者として、「18歳時点での自己選択」をテーマに、「どんな子どもも『自分はこんな人生を生きていきたい』と納得して生きていけるような支援をしたい」と考えています。樂駄屋には、まじめな子もやんちゃな子も、いじめっ子もいじめられっ子も来ますが、いろんな子が共存できるよう、スペースに配慮しています。

 もともと、暮らしづくりネットワーク北芝が運営している公共施設に通ってきていた、ある小学校高学年の女の子は、友達との関係がしんどくなってことで、公共施設に行きづらくなり、樂駄屋に来るようになりました。

 地域のなかに、いろんな居場所があるということは、意味があると感じています。
 私たち、暮らしづくりネットワーク北芝が、一番大切にしているのは「店を開ける」こと。いつも、そこに場があるということを大切にして、楽しみながら店番をしたいと思っています。

 樂駄屋には、やんちゃな子もいっぱいいます。そして、暴言を吐く子どもたちも。そんな子どもたちが「本当は何を言いたいのか」ということを、いつも考えています。

 教育的ではないつきあい、子どもが評価にさらされずにのびのびできる場として、樂駄屋を続けて行きたい。そして、子どもにとって居場所であると同時に活躍の場にしていきたいと思っています。

 子どもたち一人ひとりも地域の資源です。子どものパワーで地域が元気になっていくことが大事。樂駄屋を起点に子どもが地域で活躍できるよう活動していきたいと考えています。

相手を思いやり、尊重していくことを伝えたい

伴野多鶴子さん
(豊中市主任児童委員)

 私は、地域教育協議会連絡会会長として学校、地域、子どもたちと協働しながら活動しています。

 子どもたちはとても忙しく、1週間の予定はびっしり。なのに、週2~3日は、ミニバスケットの練習にやってきます。むしろ、それが息抜きなのかもしれません。忙しい子どもたちの、ホッとする時間を地域として守っていきたいと思っています。

 こんにちは赤ちゃん事業では、保育士と一緒に主任児童委員として地域を回っています。そのなかで、今の親は、わからないことをインターネットなどで調べ、活字的な子育てをしているのかなと感じてきました。ママたちの内なる力を活かそうと思っても答えを求められてしまう。

 娘の高校のPTA会長をやったのをきっかけに、高校生に地域の小学生にラグビーやチアリーディングを教えてもらうようになりました。そんなことから、高校生は、クラブ帰りに子どもたちを見かけると、「早よ、帰りや」と声をかけてくれたりするようにもなりました。

 「親学習」では、一人ひとり生卵を子どもと思って持ってもらい、名前をつけてもらう。そして「どんな子になってほしい?」とたずねる。ツンツン頭の子が「俺のような子にならないように…」と。子どもたちは、自ら自分の心のなかを話してくれる。

 大切にしているのは、守秘、参加、時間、尊重。どんな人でも尊重すること。相手を思いやり、尊重していくということを、子どもたちにも伝え、自分も大切にしてやっていきたいと思っています。

今日の出会いを次の活動の実践へ

田中 文子さん
(コーディネーター)

田中文子さん(コーディネーター)

 東日本大震災以降、改めて地域の大切さ、絆の大切さが問い直されています。

 子育ては親、とくに母親に押しつけられています。そして、昔ながらの家族モデル、固定的な家族像などが、子どもも親もしんどくさせているのではないでしょうか。しかし、「問題を抱える親」とみるのではなく、「一生懸命生きている人」だという視点を持つことが大切です。そして、「参加」すること。
親も子どもも、弱い存在として守られるだけではなく、自分が必要とされている、出番がある、尊重されている、ということが大切なのではないでしょうか。

 保育所、学校などでは一定の枠組がありますが、その枠をはみ出してしか、つながれないということもある。地域ならではの臨機応変さ、多様性も必要です。一方で、保育所、学校の役割もまたあります。大切なのは、お互いの役割を大切にしながら、信頼関係を築いて協働していくこと。

 さまざまな制度も、運用するのは結局は「人」。そのつなぎ手が大切。今日の出会いが「次の実践につながっていけたら」と思っています。

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